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人生のログ(にしたい)。本のメモや感想を中心に。

『統計熱力学』原田義也 感想

評判のよい化学熱力学や量子化学の本で有名な原田さんの統計力学の本。
ミクロカノニカル分布の説明を丁寧にしたあと、カノニカル分布とグランドカノニカル分布を全系をミクロカノニカル集団とみなすのと、それぞれの集団を考えるのとの二通りの仕方で導出している。集団を考えて導出したあと、未定係数のβやγがそれぞれ1/kT、-μ/kTに等しいこともきちんと導出してあり親切。
また、それらの分布の関係や、それらが同じ結果を与えることを理想気体を例に分かりやすく説明されている。

理想気体の章では、常温常圧で安定でないような単原子分子(C,Oなど)は励起状態の寄与も考えなければならないとか、多原子分子の具体的な分配関数の求め方なども載っている。多原子分子は基準振動だけでなく内部回転など考慮しなければならないことが多い。それにしても熱力学の値をうまいこと再現できるものだなあと思った。
平衡定数を統計力学表示にすることがいまいちどのようなご利益があるのかわからなかった。非理想気体や液体の章は難しかった。
この辺りの化学らしい話題の取り上げかたが面白いと思った。